テガミスト*Diary <紙飛行機ドットコム>

手紙好きの、自称*テガミストが書く『手紙のふりをした日記』です

「月の満ち欠け」に挿まれたしおり

テガミスト*Diary

拝啓、あなた様

佐藤正午さんの「岩波文庫的 月の満ち欠け」を読みました。
この本の「岩波文庫的」というところが面白いです。
この文庫本の中に、佐藤正午さんのインタビューが載ったチラシが入っていました。
そこに、この「岩波文庫的」のことが語られていました。

「岩波文庫」は、古典的文学作品を収録しているので、単行本の出版から2年半ほどの「月の満ち欠け」は、本来は岩波文庫では刊行されないのだそうです。
ところが、作者の佐藤正午さんが「岩波文庫に」とリクエストされたのを受け、装丁を岩波文庫風にしようということで、この「岩波文庫的 月の満ち欠け」が生まれたそうです。

本に挿まれていたのは、このチラシだけではありません。
文庫本にはよくあることですが、出版社のしおりも挿まれていました。

読み始めて、三分の一ほど経ったところに、そのしおりはありました。
岩波書店から出ている「広辞苑」の広告というか紹介のようなしおりです。
「広辞苑」と言えば、伊坂幸太郎さんの「アヒルと鴨のコインロッカー」だよなあと、ちょっと横道に逸れるようなことを考えながら、そのしおりをはずして、「月の満ち欠け」を読み進めました。

すると、あらまあ。
しおりが挿まれていたページの終わりの方で、物語に「広辞苑」が登場するのです。
えっ?
このしおりが、このページに挿まれていたのは偶然?
もし、偶然ではないとしたら、岩波書店さんの作戦ですか?
だとしたら、なんと丁寧なことでしょう。

装丁やしおりなど、物語の内容以外の面でも多いに楽しませていただきました。
挿まれていたチラシのインタビューで、佐藤さんは「伊坂さんにもこんなにいいものを書いてもらった」とおっしゃっています。
伊坂さんの特別寄稿も読めて、よかったです。
「月の満ち欠け」は、伊坂さんが薦めてくださるとおり、おもしろいお話でした。
最初から惹きこまれていき、この先はどうなる?と気になって、気になって仕方がありませんでした。
迷路に迷いこむような、怖さ、不思議さがありながら、そこにロマンチックな面もある、面白い本でした。

2020年もたくさんの本と出会えますように。

          かしこ 

   
「紙飛行機レター」はこちらです
「365日 本棚のしおり」はこちらです

 

---------------------------------------------

  紙飛行機ドットコム

---------------------------------------------